岡部泉(Izumi Okabe)メッセージ
旅館を考えるときに思うのは、その土地の「風土」です。気候や風景はそこに住む人の心や体、暮らしを作り出します。
私は「郷土力」という言葉をよく使いますが、その土地の自然と人と歴史が作り出した風土に、新たな付加価値を与えることによって作り出される次世代への継続可能な経済と文化の促進力を「郷土力」と呼ぶことにしています。
旅館は、まさに「郷土力」を作り出す商環境です。
2017年に大分県日田市の里山に造られた「奥日田温泉 うめひびき」は、雄々しい渓谷がそびえ立つ地にあります。そして梅の里としても有名な地で、多くの梅農家さんが自慢の梅酒や梅干しをつくる梅の産地です。
私が旅館のプランニングをするときに最初に行うことは、コンセプトとトータルイメージを言葉にすることです。そこからネーミングやロゴデザイン、空間デザイン、しつらえ、料理、制服までが決まっていきます。
この旅館のコンセプトは「梅づくし温泉」。あらゆるところで梅を感じられる宿にすること。
トータルイメージは「凛として愛らしく」。厳寒に咲く梅のように可愛らしさの中に背筋がしゃんとする凛とした佇まいがあること。
旅館は、訪れる人がその土地の風土を楽しみ味わい、新たな魅力に出会うところです。
それぞれの土地にしかない新鮮な出会いを叶える旅館でありたいと思います。
岡部泉(Izumi Okabe)
プロフィール
イエローデータ アートディレクター
旅館、レストランなどのトータルブランディング。
コンセプトワークから始まり、設計デザイン、グラフィックデザイン、しつらえ、器、食などのセレクションなどを一連とし、トータルブランディングとします。日本の美意識を根底におき、日本の手の仕事がみえる空間を得意としています。
「碧の座」「エプイ」「杢の抄」「花べっぷ」「森の謌」「水の謌」「北天の丘」「鄙の座」